ji-iのんべえ爺さん自転車に乗る

ちょっと飲んでは走り、走っては飲む爺です....が、最近医者に止められて飲めなくなりました

宿泊は田沢温泉「ますや」 重要有形文化財の老舗旅館だ

(幽玄の地 信州塩田平紀行)

11月のある日爺はいつもの通りA藤さんの自動車に自転車を積んで、一路長野県上田市を目指して出発した。今回は上田市西方の塩田平に点在する古刹をめぐり田沢温泉に一泊、翌日は修那羅峠峠から室賀に出るというコース。長野自動車道は佐久を過ぎると右前方に浅間山がくっきりと見えてきた。雲一つない晴天、絶好のツーリング日和だ。

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浅間山がくっきり

 

50年ぶりの笠取峠 懐かしかった

半世紀ぶりに中山道笠取峠に来ることができて良かった。古い石垣まで残っているなんて想像もしなかった。爺は思い出を噛みしめながら再び笠取峠の坂道を引き返していった。ストップ、ストップと言われても気づかずに坂道を下っていった同じ場所から、また一人で松並木を走っていくために。夢で見た中山道の残像を追いかけながら...。

(中山道 笠取峠紀行) 完

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現在の笠取峠

 

昔の石垣がまだ残っていた

その後、新道と合流して広くなった道を1.5km、あえぎながら上って笠取峠に到着した。国道の左斜面に古い石垣の遺構がある。一番初めのモノクロ写真にも写っているものだ。この石垣は取り壊しを免れたようだ。1967年当時の峠路を拡充する際、右側部分だけを拡げて左側はそのまま残したのだろう。

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左斜面に今も残る石垣の遺構

 

この場所で仲間が二度パンクした

一つ前の画像(新道と旧道の松並木が交差するところ)から250m峠に向かって上ってきた。突然閃いた。「ここだ!」と。この場所こそ仲間が二度パンクしたところだろう。その昔、この峠を下っていてふと振り返ると誰もついてこなかった。元来た道を戻ると一人がパンク修理をしていた。なんとか直してまたみんなで走り出したがしばらくするとまた誰もついてこない。再び戻るとまたパンク修理している。さっきのは前輪で今度は後輪を修理している。同じ石に両輪とも乗り上げたらしい。「最初のパンクで気が付けば爺も二度戻らなくて済んだのに!」、「だってO爺さん、ストップ、ストップって呼び止めたのに、どんどん一人で走ってっちゃうんだもん」。そのときの情景がいままざまざと蘇った。

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仲間が二度パンクしたところ(推定)

 

昔の砂利道が立派な公園のようになっていた

画像は国道142号線(中山道)と旧道の松並木が交差するところ。昔、仲間が二度パンクしたところを探しながら上ってきたが見つからない。記憶が曖昧になっているせいかもしれない。

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新道と旧道が交差するところ

 

ふと顔を上げると昔の仲間が立ち止まっていた

いつの間に現れたのか、あの時の一人がトップチューブにまたがったまま上から爺を見下ろしている。爺は顔を上げて「頼むよ、パンク修理は一度で片づけてくれよ」と不平を漏らした。爺の言葉が聞こえなかったのか彼は何も言わずに笠取峠の坂道を下っていく。「おい!待ってくれよ!」と呼び止めたところで目が覚めた。半世紀以上前と同じ旧街道の同じ場所に座っていながら夢の中でしかあの日に帰れないのが切ない。

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眠っている間に夢は半世紀以上遡る