ふと顔を上げると昔の仲間が立ち止まっていた
いつの間に現れたのか、あの時の一人がトップチューブにまたがったまま上から爺を見下ろしている。爺は顔を上げて「頼むよ、パンク修理は一度で片づけてくれよ」と不平を漏らした。爺の言葉が聞こえなかったのか彼は何も言わずに笠取峠の坂道を下っていく。「おい!待ってくれよ!」と呼び止めたところで目が覚めた。半世紀以上前と同じ旧街道の同じ場所に座っていながら夢の中でしかあの日に帰れないのが切ない。
いつの間に現れたのか、あの時の一人がトップチューブにまたがったまま上から爺を見下ろしている。爺は顔を上げて「頼むよ、パンク修理は一度で片づけてくれよ」と不平を漏らした。爺の言葉が聞こえなかったのか彼は何も言わずに笠取峠の坂道を下っていく。「おい!待ってくれよ!」と呼び止めたところで目が覚めた。半世紀以上前と同じ旧街道の同じ場所に座っていながら夢の中でしかあの日に帰れないのが切ない。